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レポート

2024年2月19日 U-FINO

来場者体験型の大学・研究機関による展示会と都市型カンファレンス
イノベーションストリーム KANSAI 7.0 “うめきた Fusion~ディープテックで拓く関西の未来~”

 2023年12月19日、20日に、グランフロント大阪北館地下2階のナレッジキャピタルコングレコンベンションセンターで「イノベーションストリームKANSAI 7.0 “うめきた Fusion~ディープテックで拓く関西の未来~”」を開催しました。
 28の大学・機関等による展示会と17のカンファレンスのほか、同時開催イベントや合同開催イベントとも連携して開催し、関西を中心にイノベーションに関わる様々なプレイヤーが集まる場となりました。2日間にわたる開催の様子を振り返ります。

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展示会場の各ブースでは参加者と出展者以外にも、出展者同士でも熱い意見交換が行われていました。

まちの中心で最新の研究内容・共創活動に触れ、体験できる展示会

 今回の展示会には、協力出展機関をあわせて過去最多の28の大学・機関に出展いただきました。イベントのテーマであるディープテック分野からは、AI/人工知能のテーマには、龍谷大学と同志社大学の2大学からの出展がありました。そのうち同志社大学からは、画像識別AIモデルを用いて、人の目では識別が難しい、壁紙を自動で分類できるアプリを紹介いただきました。
 人の見た目ではほぼ同じに見える壁紙のサンプルを読み込むとすぐに商品名・商品番号を教えてくれる画期的なアプリに体験者から感嘆する声が上がり、画像識別AIを活用した未来の一端に触れることができました。

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建設業界において長らくの課題であった長時間作業から解放するDXの好事例となるとともに、同志社大学とコマツ㈱による連携の成果であり、産学連携のモデルケースとなる事例でもあります。

 バイオの分野では、大阪工業大学、京都先端科学大学、甲南大学、奈良県立医科大学から各大学の取り組みなどを紹介いただきました。また、AR/VRの分野では、関西学院大学から「認知症がもたらす記憶障害を「自分ごと」として体験するVRシステム」を紹介していただきました。
会場ではインスタントコーヒーを淹れる作業を通じて、記憶障害を持つ患者の感情を追体験できるVR体験ができました。実際に体験すると、自分で用意したはずのコップが無くなったり、時間がいつの間にか経過していることなど、VRを通じて体験することができ、患者さんがどのように感じているのか実感を持つことができました。

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VRで実際に体験をすることで、患者の困りごとを実感することができ、他者理解にもつながるとともに、自分とは異なる感覚・人生を体験できた気がしました。

 ナノテクノロジーの分野では、奈良女子大学から「コメ中に含まれるカドミウム含量簡便定量のための化合物探索」と題して環境有害物質である重金属イオンやリン酸種などの検出および定量法について紹介していただきました。また、自動運転分野では、大阪公立大学から、「パーソナルモビリティの自動運転に向けた要素技術」を紹介していただきました。

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大阪公立大学のブース前の体験スペースで、実際に乗車体験もしていただきました。
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出展者によるミニレゼンには、奈良県立医科大学発ベンチャー モルミル株式会社表取締役社長 森 英一朗氏(写真左)、関西大学システム理工学部機械工学科教授 小谷 賢太郎氏、兵庫県立工業技術センター 材料・分析技術部 食品・バイオグループ主任研究員 今井 岳志氏(写真右)にご登壇いただきました。

特別コンテンツ「U-FINOがめざすイノベーション創出」

 19日のホールB+C特設会場で、特別コンテンツとして、本年9月に先行まちびらきする、うめきた2期地区開発プロジェクト「グラングリーン大阪」を拠点にイノベーション創出支援をするU-FINOのこれからの活動について紹介しました。冒頭には、グラングリーン大阪に拠点を置くことを昨年9月に発表した、さくらインターネットの田中社長から「関西の未来を創るオープンイノベーション~さくらインターネットの新拠点が変えるイノベーションの風景~と題して基調講演をしていただきました。

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オンラインでの登壇となりましたが、多くの方が田中社長の熱い言葉に引き込まれていました。

 続いては、U-FINO設立前のうめきた2期みどりとイノベーションの融合拠点形成推進協議会での活動時から、共に「T-CEP」に取り組む、株式会社Co-learning 代表取締役・山形大学 客員教授の竹枝 正樹氏、ITPC 代表 潮 尚之氏にご登壇いただきました。お二人からは、「T-CEP でめざす人財育成:テクノロジードリブンな事業開発を通して」と題して大学等が保有する要素技術を大企業のビジネスパーソンが事業化することを通じた人材育成プログラムの開発と検証結果、見えてきた課題についてご講演いただきました。

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今年5年目を迎えるT-CEP。これまでも、年間約20人ずつ事業化プロデューサー人材を育成・輩出しています。

 さらに引き続き、株式会社脱炭素化支援機構 取締役専務執行役員(事業推進担当:CIO)の上田 嘉紀氏をお招きし、「スタートアップの資金調達を支える脱炭素化支援機構の役割とうめきたへの期待」と題して、幣機構理事長の中沢との対談形式で脱炭素社会の実現に向けての支援機構の役割やうめきた2期にとどまらず、支援者から選ばれるために必要な要素などについてご講演いただきました。

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関西に長くおられた上田さんからは、東京から見た関西などについても言及があり、JICNへの関西からの相談件数が少ないとのご指摘がありました。

 昼食休憩後には、「U-FINO がめざすイノベーション創出とは」と題して、阪急阪神不動産株式会社 代表取締役社長 諸冨 隆一氏と、幣機構の理事長中沢によるクロストークを開催しました。
 スポーツキャスターの市川いずみ氏による進行で理事長からは、U―FINOの現在の活動について、4つの言葉「創る」「集める」「つなぐ」「育む」で紹介するとともに、新しい産業を創ることに重点を置いて活動していく旨の紹介がありました。また、諸冨社長からは、梅田エリアの果たす役割などを踏まえた取組などについてお話をいただきました。

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行政・経済界・事業者が参画する官民連携組織であるU-FINOならではの活動への期待と決意が述べられました。

災害時の食を中心とした新産業創出共創コミュニティ
~ライフスタイルに溶け込む災害時の食と生活環境からの産学官連携による共創~

 19日のルーム9では、災害食を中心に、災害対応に関わる様々な課題の可視化・共有をはかり、また、フェーズフリーをすすめることで地域全体の災害レジリエンスの強化につなげる産学官連携、多分野産業の融合によるビジネス共創コミュニティを形成するキックオフイベントを開催しました。食にとどまらず、多様な分野の登壇者・参加者が集まり、質疑や終了後の意見交換も活発に行われ、今後のコミュニティ活動への期待の高さを感じました。

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2023年10月、様々な製品・サービスの国際的な標準規格を策定する国際標準化機構(ISO)において、日本が提案した「災害食の品質基準」が規格検討の新作業項目として承認されたことを坪山先生(写真左)からご紹介いただきました。

参加者と一緒に創りあげるワークショップ

 19日のルーム8では、合同開催イベントとして開催した「WestShip2023」とのコラボコンテンツとして、午前には事業会社とスタートアップとの共創をテーマにした、「実践者と考える、事業会社とスタートアップのあるべき関係性」を開催しました。また午後には、自治体において事業創出施策を牽引するリーダーが集い、事業会社やスタートアップを交えて「地域発イノベーション2.0 ~地域発の事業をスケールさせるポイントとは~」をそれぞれワークショップ形式で開催しました。

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登壇者と参加者、参加者同士の意見交換により、それぞれの立場からの多様な視点を踏まえた魅力的な発表も聞くことができました。これまでのイノストでは開催のなかったワークショップは、合同開催イベントのWestShipとのコラボにより実現しました。

「U-FINO×バイオコミュニティ関西シンポジウム」
~バイオコミュニティの振興に向けて~

 20日のルーム9の午前中には、バイオコミュニティ関西(BiocK)と連携したシンポジウムを開催しました。
 冒頭に、内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局バイオグループ 上席政策調査員の栄氏、続いて、バイオコミュニティ関西(BiocK) 副委員長兼統括コーディネーター 坂田氏によるご講演とお二方にご講演をいただいたのち、BiocKの3つの横断的な活動に取り組む分科会とU-FINO事業統括部長の橋本も加わったパネルディスカッションを通じて、グラングリーン大阪の場を活かした取り組みについての意見交換ならびに情報発信を行いました。U-FINOでは、今後、27に及ぶBiocKの各分科会と連携をとって関西圏でのバイオ分野のオープンイノベーション推進に貢献して参りたいと思います。

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2030年、2050年の社会課題の解決を目標とした持続可能な社会実現のため、バイオファーストの発想を広げ、グローバルバイオコミュニティとして活動を進め、関西を拠点にバイオ分野における究極のエコシステムに貢献することを目標としているBiocKと有意義な意見交換を行いました。

URBPキックオフイベント!
自社事業のブレイクスルーを目指す関西企業とスタートアップのコラボプロジェクト

 U-FINOの今年度事業の1つとして、中堅・中小企業とスタートアップ企業の協業マッチング支援に取り組んでいます。20日に、選考された中堅・中小企業とスタートアップ企業各社によるプレゼンを実施しました。

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参加したスタートアップ企業からは自社事業の強みについて、中堅・中小企業からは自社事業の課題と本プログラムへの期待について、それぞれ発表がありました。両者のコラボから生まれる今後の成果に期待したいと思います。

インターカレッジコンペティション2023 ピッチファイナル

 U-FINO主催イベントとしてリニューアルして初めて開催した、インターカレッジコンペティション2023の最終プログラムとなるピッチファイナルを開催しました。本プログラムは、大学生のチームを対象に、スポーツ、ウエルネスを軸に新たな価値を創造する斬新なアイデアを競い、9月のキックオフ後、11月のてんしば「Ex-CROSS」でのフィールドワークや、アスリートファシリテーターによるアドバイスや支援によりブラッシュアップしてきました。
 20日のピッチファイナルの結果、最優秀賞とアスリート賞が決定しました。

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参加した、京都外国大学、福山大学、大阪成蹊大学、大阪体育大学の合計7チームによるピッチでは、被り物やデモなど、チーム毎の個性も感じられました。

それぞれの盛り上がりを感じたトークセッション・コラボレーションコンテンツ

 今回のイベントでは、上記でとりあげたコンテンツ以外にもU-FINOと各機関が連携して多数のトークセッション、ワークショップ等を実施しました。それぞれの会場では産学連携や社会課題解決型のイノベーション創出、ディープテック分野のイノベーション創出をテーマにしたセミナーやパネルディスカッションのほか、参加者も連携するワークショップや、スタートアップ企業・学生によるピッチなども開催されました。各会場では、それぞれ終了後も活発な交流や意見交換が行われ、非常に熱気がありました。各イベントの主催機関の皆様にはこの場をお借りして改めてお礼申し上げます。

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(左1段目)関西学院大学 感性価値創造シンポジウム
(右1段目)関西発、ディープテックスタートアップが本音で語る社会課題解決とビジネス
(左2段目)Global Deeptech Accelerator Osaka 採択スタートアップピッチ
(右2段目)トーク&座談会 まざまざとさまざまがまざるさま
(左3段目)NEDOセミナー 関西スタートアップエコシステムの醸成にむけて
(右3段目)うめきたデザインガール
(左4段目)うめきたIdentityAcademy
(右4段目)Local X Forum
(左右5段目)KSIIゼブラ認定セレモニー
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大阪府・大阪市万博推進局も出展していた展示会場には、万博公式キャラクターのミャクミャクも応援に来てくれました(写真左)。今回は、参加者の属性毎に色の異なるストラップをお渡ししました。(写真右)
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合同開催イベントとして20日(水)にはWestShip(写真左)、同時開催イベントとして、19日(火)にはHack Osaka2023 -2nd.Edition-と会場を隣り合わせで開催しました。20日(水)のイベント終了後にはネットワーキング(写真右)もWestShipと合同で開催しました。ネットワーキング会場ではあちこちで活発な交流が行われていました。

 今回のイノスト7.0では、U-FINOの事業でご協力いただいた神戸や京都の関係者をはじめ、U-FINOの事業やイベントに参加していただいた方にご参加いただくことができ、年に1回、U-FINOに関係する様々な属性の方に集まっていただく場となりつつあることが感じられました。大学・研究機関による最先端の技術から、大企業のオープンイノベーションまで、既存の枠組みにとらわれず、共創をめざす人や企業が出会う場、ともにイノベーションに取り組む場として、グラングリーン大阪に集まり、それぞれの得意分野を持ち寄り共創する。そんな未来への期待が膨らみました。
 U-FINOでは引き続き、関係機関と連携しながら、イノベーション創出につながる様々な事業を進めてまいりますので、引き続き皆様のご支援、ご参画をお願いいたします。

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