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レポート

2023年3月30日 設立記念イベント

グラングリーン大阪のまちづくりはこうなる!
「イノベーションストリームKANSAI 6.0」で見えたもの

 2月21日と22日の2日間にわたり、グランフロント大阪のコングレコンベンションセンターにて「イノベーションストリームKANSAI 6.0」が開催。リアルでの開催で活気に満ちた会場の模様をお伝えします。

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2020年以降はオンラインでの開催が中心となっていた「イノベーションストリームKANSAI」。6回目の今年は、3年ぶりの規模でのリアル開催となりました。セミナーと展示会場とを人々が行き来する様子はまさに「ストリーム」でした。

 2024年夏に予定されている、うめきた2期地区開発「グラングリーン大阪」の先行まちびらき。「『みどり』と『イノベーション』の融合拠点」というコンセプトのもと、関西一円の研究開発拠点や大学などで生み出された新たな技術と産業、ユーザー、情報が既存の垣根を越えて繋がり、新たな価値を生み出すイノベーションの場となることを目指して開発が進められています。

 「ライフデザイン・イノベーション」をテーマとした新産業創出というビジョン実現に向けた取り組みを推進するうめきた未来イノベーション機構(以下、U-FINO)は、2023年2月21日、22日に行った設立記念イベントの一環として「イノベーションストリームKANSAI 6.0」を開催しました。主なプログラムは、大学・研究機関による体験型展示と、イノベーションをテーマとしたセミナーとに分かれます。

「最先端」が集まり繋がることで、暮らしがどう変わるかを体感できる展示会

 展示会には26の関西の大学、研究機関が参加しました。たとえば京都先端科学大学は、ストレスに着目した健康計測機器・運動促進アプリといったヘルスケアを支える技術を展示。VRを活用した文化資材の再現コンテンツなど、教育を支える技術を見せたのは同志社大学です。未来に繋がる、あらゆる分野の技術が集結しました。

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開場直後から展示会場には続々と来場者が訪れ、どのブースも活気あるやり取りが行われました。
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大学や研究機関の研究者と近い距離で話せる場ということもあり、参加者と出展者が熱心にやり取りする場面も。一方通行ではない双方向での交流が実現し、さらなる共創の広がりも垣間見えました。

 そのほか、関西文化学術研究都市推進機構による「けいはんなイノベーションエコシステム構築」についてのパネルや、神戸大学による涙液を用いたがん検出技術に関する展示なども、来場者の注目を浴びていました。

 いずれの展示も、人・技術・情報が集まり繋がることで、グラングリーン大阪のまちで生まれていくイノベーションと、そこでの暮らしがいかに豊かなものになるかを各種デバイスによる体験を通じて実感できるものばかり。グラングリーン大阪で産学官民が出会い、繋がり、技術が製品化・サービス化に繋がっていくという期待が高まる内容となりました。

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右側が、関西文化学術研究都市推進機構の展示。京都、大阪、奈良にまたがる「けいはんな学研都市」で進むイノベーションエコシステム構築のための取り組みについて解説したパネルや、メタバースとリアル社会の連携を視野に入れ、最先端技術を用いたゲーム開発を行うHalle Game Labと共創した技術などが展示されました。
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奈良県立医科大学による展示。パーキンソン病患者や高齢者が簡単に筋力リハビリテーションをできるようにする手指機能強化手袋など、これまでにない弾性編み物技術を応用した医療機器が展示されました。

まちで共創を生み出すために、いかに「関係性」と「場」を作るか

 イノベーションの創出には、共創を生むコミュニティをいかに醸成するかが重要になります。そこを考える場として、多くのセミナーが開催されました。そのひとつが2月21日開催のセミナー、「関西でのイノベーション創出コミュニティの実現に向けて」です。

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「関西でのイノベーション創出コミュニティの実現に向けて」と題したセミナーに登壇したSUNDREDの代表取締役社長、留目真伸氏。対話をもとにした新産業共創のプロセスを生み出し、あらゆる事業の共創を推進しています。

 最初に登壇したのは、新産業の共創を目指すSUNDRED代表取締役社長、留目真伸氏です。「新産業の共創という新たなイノベーション・モデルの社会実装」と題した講演のキーワードとなったのが「インタープレナー」という存在。インタープレナーとは、組織の枠を越えて社会起点で価値を創造していく個人のことを指します。グラングリーン大阪のまちでインタープレナーたちが築いていく関係性についてのヒントが見えるセミナーでした。

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講演の冒頭、「皆さんは幸せなよりよい未来をつくる方法を知っていますか?」という質問を投げかけ、聴衆の心をぐっとつかむ留目氏。

 留目氏は、「これからの時代を生き抜いていくためには、個社で閉ざすのではなく、社会の中でそれぞれが結合していくことが重要」と話します。そのためには「社会の中で“対話”し、同じ目的を持つ者と目線を合わせることがイノベーションの第一歩」と述べました。「組織の壁を越えて対話し、新しい目的を実現しようとしている社会人すべてがインタープレナー」と言う留目氏。「うめきたのまちもインタープレナーの活躍できるような場になっていけば、世界が求める場を実現できるのではないか」と語りました。

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講演の最後に、留目氏は冒頭と同じ質問を投げかけました。開始時よりも自信を持って手を挙げる参加者が増え、インタープレナー誕生の萌芽が見えました。

 続いて登壇したのは、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」の運営元であるユーザベースの代表取締役、稲垣裕介氏です。

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ユーザベースの代表取締役でCo-CEO / CTOを務める稲垣裕介氏。

 同社は、地域での新たな共創を推進する事業も積極的に展開しています。稲垣氏は、グラングリーン大阪のまちが生み出すであろう「場」の可能性について語りました。

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稲垣氏は、自社の渥美奈津子氏との対談形式で講演を行いました。

 稲垣氏が言及したのは、同社が大阪で手がけた「WestShip」というイベント。関西のビジネスリーダーが垣根を越えて繋がり議論するもので、初年度にリアルで1,000名、オンラインでは5,000名を集めたとか。「大阪という都市の可能性を改めて実感した」とのことです。

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グラングリーン大阪のパース画像と共に、その可能性について語る稲垣氏。

 「コロナ禍を通じて実感したのは、オンラインだけではリレーションは深められないということ。うめきた2期のまちは、リアルに会うことの熱量を大事にしながら、いろいろな人が交流できる場になってほしい」と、稲垣氏は話を締めくくりました。

うめきた2期のまちと、その接点を生み出す新駅のこれから

 同じく21日には、「うめきた2期におけるまちづくり、大阪駅の取り組みについて」と題したセミナーも行われました。ここでは、うめきた2期地区開発プロジェクト「グラングリーン大阪」について、そして、日本全国および世界との接点の中心となることが期待される大阪駅(うめきたエリア)について、具体的な取り組みが語られました。

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2月21日開催の「うめきた2期におけるまちづくり、大阪駅(うめきたエリア)の取り組みについて」と題したセミナー。グラングリーン大阪のまちびらきに期待を寄せる多くの参加者が集まりました。

 グラングリーン大阪開発事業者を代表して登壇したのは、阪急阪神不動産の橋本英仁氏です。2024年夏に先行まちびらきを予定しているグラングリーン大阪のコンセプトや、それぞれの担う役割を解説しました。

 グラングリーン大阪のコンセプトは「Osaka MIDORI LIFEの創造」です。自然豊かな都市公園の設営など、「みどり」の中で過ごせる空間にすることで、市民や来街者のQOLを向上。同時に、企業や研究機関が集まり繋がり合う場を設けることで、「イノベーションの創出」に導く。このふたつの軸で、活力あるライフスタイルを実現したいという思いから今回のコンセプトが生まれたと、橋本氏は語ります。

 空間を形成するのは北街区と南街区、そして中心に位置する都市公園。加えて、中核機能であるイノベーション・プラットフォームや、国内外からの来訪者が楽しめる商業施設など、市民の暮らしを豊かにし、企業・研究機関のイノベーション創出を促す空間づくりの全貌がわかりやすく紹介されました。

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最初の登壇者は、阪急阪神不動産で開発事業本部に所属し、うめきた事業部部長を務める橋本英仁氏。
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グラングリーン大阪が目指す「みどり」と「イノベーション」の融合拠点、「Osaka MIDORI LIFE」のコンセプトを示した図。提供:グラングリーン大阪開発事業者
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グラングリーン大阪の全体像イメージ。都市公園を中心にあらゆる施設で構成されています。(提供:グラングリーン大阪開発事業者)

 続いて登壇したのは、西日本旅客鉄道の鉄道本部イノベーション本部担当課長、小森一氏です。2023年3月18日に開業する大阪駅(うめきたエリア)で取り組むイノベーションなどについて講演しました。

 大阪駅(うめきたエリア)は、JR西日本が目指す技術ビジョンを具体化する実験場としてさまざまな新たな技術・サービスを導入するとともに、多彩なパートナーとの共創の場として重要な役割を担います。さらに、JR西日本が目指す技術面でのビジョンを実現するために始動させたのが「JR WEST LABO」。ここでは共創パートナーを募集しており、うめきたエリアは「オープンイノベーションの実験の場」になっていくのだといいます。

 小森氏はこの駅で導入する新たな技術・サービスの事例として、ふすまのように開閉するフルスクリーンホームドアや、デジタル動画を活用したデジタル案内サイン、顔認証改札機などを紹介。誰もが利用する駅の話だけに、聴衆はイノベーションへの期待を膨らませていました。

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西日本旅客鉄道の鉄道本部イノベーション本部担当課長、小森一氏。

 「今後も共創パートナーと連携しながら、うめきたエリアを中心に技術やサービス、アイデアを実現していきたい」と述べた小森氏。「うめきたエリア開業は始まりにすぎない。ここからオープンイノベーションを加速させていきたい」と講演を締めくくりました。

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JR WEST LABOが目指す未来の駅の構想図。ワクワクする未来はすぐそこまで来ているのかもしれません。(提供:西日本旅客鉄道株式会社)

あらゆる分野のイノベーションが、グラングリーン大阪のまちに広がっていく

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22日のセミナー「関西で広まる産学官連携によるスタートアップ・エコシステム推進について」に登壇した、公益財団法人大阪産業局スタートアップエコシステムコンソーシアム事務局の是洞公紀氏。

 22日も多彩なセミナーが目白押しでした。そのひとつ、「関西で広まる産学官連携によるスタートアップ・エコシステム推進について」と題したプログラムでは、大阪産業局のスタートアップエコシステムコンソーシアム事務局から是洞公紀氏が登壇。大阪産業局が今年度から実施するスタートアップ創出のためのプログラム「起動」など、エコシステム形成への取り組みを紹介しました。

 その他、21日には「関西オープンファクトリーフォーラム」、22日にはNEDOセミナー「組織内イノベーション人材~発掘と育成に向けた組織づくり~」、関西学院大学による「感性価値創造シンポジウム」、「『価値共創』が紡ぐイノベーション」をテーマにした対談形式のプログラムなども開催。あらゆる視点から生まれる議論をきっかけとして、イノベーションを生むために必要なことや、これからの暮らしがどうなっていくのかを具体的にイメージできる、内容の濃いセミナーが続きました。

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22日の午後に行われたセミナー「『価値共創』が紡ぐイノベーション」の模様。左から、成光精密代表取締役の高満洋徳氏、コネル金沢代表取締役の宮田大氏、浜野製作所代表取締役の浜野慶一氏、日建設計リサーチャーの吉備友理恵氏ほかが「価値共創」について意見を交わしました。

 数多くの展示とセミナーが融合した、イノベーションストリームKANSAI。全体を通して見えてきたのは、グラングリーン大阪で生まれるイノベーションの可能性の広がりです。関西の大学・研究機関による最先端の技術と、組織の枠を越えて共創したいと考える人や企業とが、グラングリーン大阪という場に集結し花開く未来に期待が膨らむイベントとなりました。

●文:藤岡優希 写真:木村正史、内藤貞保、東谷幸一

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