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レポート

2023年3月30日 設立記念イベント

想いが響き合い共創へと繋がる、
「うめきた響合の場」

 2023年2月21日と22日の2日間にわたり、グランフロント大阪ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターにて「第3回 うめきた響合(きょうごう)の場」が開催されました。コンテンツは、個別マッチングとミニセミナーです。

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今回で3回目の開催となる「うめきた響合の場」。全27の機関が「出店(でみせ)」のようにブースを設け、スタートアップ企業ほかアイデアの持ち主たちと個別面談を行います。

 時代が変化する中で、ビジネスにおいて企業同士や、産学官が連携、支援機関を活用するニーズは高まってきています。ただ、そうは言っても連携先や支援機関をどのように探せばいいのかわからない、また探すことができてもどう交わればいいのかわからないという課題を持つ人が多いのも事実です。

 グラングリーン大阪のまちが共創やイノベーション創出の拠点となる上で、スタートアップ企業や大学がもっと気軽にアイデアや課題を持ち込み、提案・相談できる機会を増やせないか――そんな思いに応えるトライアル事業として開催されたのが「うめきた響合の場」です。グラングリーン大阪のビジョンの実現を推進する、うめきた未来イノベーション機構(以下、U-FINO)が2月に行った設立記念イベントの一環として、関西経済連合会、関西イノベーションイニシアティブとともに実施されました。また、東京のアクセラレータであるゼロワンブースターも協力しています。

縁日の「出店」のように、1対1で交流し合える面談タイム

 本イベントの目玉は、大企業や行政、支援機関、大学が縁日の「出店(でみせ)」のように軒を連ねる面談ブース。そこにアイデアや企画のタネ、悩みを抱えたスタートアップ企業が個別面談を申し込めるという、新しい形式のマッチングイベントです。

 今回も、関西を代表する企業や支援機関、大学が参画。1ターム30分、1日に計8タームの面談時間が設けられ、提案・相談したいスタートアップ企業等が入れ替わり立ち替わり訪れます。面談は事前申込み制で、初日の開場直後から会場は賑わいを見せました。東京からの参加者や、枠が空いている時間に飛び込みで訪れた参加者もいました。

 相談を受け付ける「出店」の課題やニーズは事前にヒアリングされ、ウェブサイトで公開されました。参加者はそれらを見た上で、面談企業を選択して申し込みます。この方式を採ったことで、より濃いマッチングと、具体的な課題解決に向けての実り多い議論が実現しました。2日間で行われた面談マッチング数は約135件。リアルでの対話により、充実した繋がりが持てたことで、今後のイノベーションの萌芽が見えたイベントとなりました。

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関西を代表する大企業とも交流できる「出店」には、夢とアイデアを抱える多くの人が詰めかけました。会場には縁日をイメージしたイラスト付きの案内図も用意されました。

複数対複数で想いを響かせ合う、参画機関によるミニセミナー

 出店形式のマッチングイベントに加えて、そこに参画した機関の取り組みやビジョンの理解を深める場として、ミニセミナーも実施されました。個別面談よりも参加へのハードルが低く、より多くの企業等と出会えるのがミニセミナー。共感できる機関を探して、あるいは気になる機関への理解を深めようと、参加者が会場に集まりました。

 初日のミニセミナーに参加したのは京銀リース・キャピタル(京都銀行グループ)、竹中工務店、住友電気工業です。京銀リース・キャピタルは「京都銀行のスタートアップ支援及び、大企業様との協業サポートについて」と題したセミナーで、河野慎吾氏が登壇。ベンチャー企業へ実施した投資や、スタートアップに向けた支援策が語られました。参加者からは、「スタートアップ企業は数多くあるが、どのようにタッチポイントを作っているのか」といった質問が投げかけられていました。

 竹中工務店からは長岡勉氏が登壇し、「『心地いい未来』のスマートシティを竹中工務店と一緒に実現しましょう」と題したセミナーで、ただ建物をつくるだけにとどまらない、社会や暮らしの未来をよくしていくためのビジョンを紹介。ビジョンに共感し共創の可能性を示すことのできるスタートアップへの呼びかけを行いました。

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「出店」に参画した機関によるセミナーの様子。左はファシリテーターを務めた、ゼロワンブースターの本庄正季氏。右は、京銀リース・キャピタル(京都銀行グループ)の河野慎吾氏。
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セミナー後に、名刺交換をする参加者。こうした交流ができるのも、うめきた響合の場の大きな魅力です。

 住友電気工業は「企業紹介とモビリティ領域での(液体)水素利用に関する技術連携の概要」と題したセミナーに、藤平充明氏が登壇。脱炭素に向けた液体水素利用の取り組みを具体的に説明しながら、「ニーズが合う企業と技術連携を推進していきたい」と語りました。

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住友電気工業の藤平充明氏。液体水素を利用した要素技術について、同社の取り組みも紹介しました。

 2日目は、7つの機関がミニセミナーを実施。午前の部には、関西広域産業共創プラットフォーム、塩野義製薬、ABCドリームベンチャーズ、NTT西日本が参加しました。

 関西広域産業共創プラットフォームからは、野地千晶氏が登壇。関西広域連合域内における公設試験研究機関の連携が目指す姿が語られました。公設試験研究機関とは、地方自治体によって設置された地域の中小企業の技術開発関連の指導や試験、分析、共同研究などを行う機関のこと。そこでは専門研究員が、技術に関する無料相談に応じています。公設試験研究所が連携することで広がる技術支援や共創の可能性に、参加者は興味津々でした。

 塩野義製薬の山上博子氏は、「Shionogi Transformation Strategy 2030ビジョン」と題したセミナーで、「医療としてのヘルスケアではなく、サービスとしてのヘルスケア」を目指すといった同社のビジョンを紹介。参加者からの「ヘルスケアをサービスとして提供するのなら、自社製品を推し出すだけでは実現できないのでは」という鋭い指摘から、熱いやり取りが生まれる場面もありました。

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参加者とやり取りする塩野義製薬の山上博子氏。

 ABCドリームベンチャーズからは、北田淳氏が登壇。「社会問題解決型ファンドとメディアの役割りについて・起業家にスポットを当てた、スタートアップメディアについて」というテーマで、放送局(朝日放送)のグループ会社だからこそ実現できる投資事業を紹介しました。また、同社が「ハフポスト日本版」と共同で立ち上げた、ビジネスの最新トレンドを追うウェブ上の特集「STARTUP STORIES」にも言及。起業や新規事業のストーリーを情報発信するコンテンツのひとつとして、活用を提案しました。

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新メディア「STARTUP STORIES」を紹介する、ABCドリームベンチャーズの北田淳氏。

 NTT西日本からは下川哲平氏が、大阪・京橋に開設された会員制のオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」を紹介。京橋というまちの可能性を語りながら、「社会課題解決を目指すビジネスを共創したい想いがあれば、ぜひ入会してほしい」と促しました。すでに施設を利用している会員も来場しており、関西のまちに共創コミュニティが生まれ始めていることが実感できたセミナーでした。

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「QUINTBRIDGE」を利用したことがあるか、というNTT西日本の下川哲平氏の問いかけに、手を挙げる参加者。

 午後の部には、シリ丹バレー推進協議会、和歌山大学、関西電力の3機関が登壇。セミナー後には聴衆と登壇者が名刺を交換したり、対話をする場面も多く見られました。出店と同様に、一方的に話を聞くだけの場ではなくイノベーション創出に繋げようという双方の想いあふれる交流の場となっていて、ここで生まれた繋がりの発展に期待がもてる2日間でした。

うめきた響合の場が、グラングリーン大阪のまちにもたらすもの

 1対1の出会いの場としての出店と、ミニセミナーで何度も見られたのは、想いやビジョンが響き合い、イノベーション創出のきっかけが生まれる瞬間です。うめきた響合の場はそもそも、グラングリーン大阪のまちに同様の交流拠点をつくるためのトライアルの場。しかし3回目を終えた今は、ショーケースの枠を超えて、近い将来に大企業や支援機関がうめきた2期のまちに実際に拠点を作り、そこでイノベーションが日常的に創出されていくさまを、参加者誰もがくっきりと思い描けるようになっています。

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出店にて、熱心に議論を交わす人々。うめきた2期で、このような光景が日常的に見られる日が近づいてきています。
●文:藤岡優希 写真:木村正史

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